OPHTHALMOLOGY SPECIALIZED FIELDSOPHTHALMOLOGY SPECIALIZED FIELDS

OPHTHALMOLOGY SPECIALIZED
FIELDS
専門分野
斜視弱視・小児眼科

小児および成人の斜視の治療と研究、小児の弱視の治療と研究に取り組んでいます。小児においては視機能(視力および両眼視機能)の発達を最大限にすることを目標として診療にあたり、後天性の斜視においては原因精査を他科と連携しながら迅速に対応しています。また、患者さんがお困りになっていることを詳細にヒアリングしながら、患者さんの希望に沿った治療を進めています。

医師

DOCTORS

  • 横山 吉美
    横山 吉美
    JCHO中京病院 眼科
    医長
  • 津久井 真紀子
    津久井 真紀子
    加藤眼科医院
  • 穂積 健太
    穂積 健太
    JCHO中京病院 眼科
  • 市川 翔
    市川 翔
    中京眼科 副医長
  • 矢ケ﨑 悌司
    顧問
    矢ケ﨑 悌司
    眼科やがさき医院

診療内容

CLINICAL SERVICES

乳児内斜視

術後の立体視獲得のため、JCHO中京病院 眼科では生後8ヶ月以内の超早期手術を推奨しています。しかし、斜視角が大きくない、斜視角に変動がある、などの場合は、プリズム眼鏡での経過観察を行うこともあります。いずれにしても、早い時期から手術またはプリズム眼鏡にて眼位を矯正することが、よりよい両眼視機能の獲得に重要であると考えます。

調節性内斜視

好発年齢は2~3歳と言われていますが、1歳未満で生じる調節性内斜視もあります。屈折検査は調節麻痺点眼を用いて行い、手持ちレフラクトメーターでの測定が困難な低年齢の患者さんにおいても医師が検影法にて検査を行い眼鏡処方します。眼鏡を常用しても内斜視が残存する部分調節性内斜視の場合は、プリズムを用いた眼位矯正を行ったのちに必要に応じて手術治療を行います。orthoptic effectと言われますが、斜視手術をする前にプリズムで眼位を矯正し両眼視できる状態をつくっておくと手術後の眼位も安定しやすいと報告されており、JCHO中京病院 眼科では積極的に術前にプリズム治療を行っています。

間欠性外斜視

日本人で最も多い斜視のタイプです。両眼視機能は良好に発達している場合が多いため、斜視になる頻度に応じて就学前後〜小学校低学年で手術を計画する場合が大半です。間欠性外斜視の中でも、A型やV型、開散過多型や輻輳不全型などそれぞれの状態に応じて手術方法を選択します。とくに斜筋異常を伴うA型斜視やV型斜視においては斜筋手術を併用することで、第一眼位だけでなく、上方視および下方視の斜視も矯正します。両眼視できる範囲をいかに広くするかを常に考え手術方法を選択しています。

先天性上斜筋麻痺

片眼性の先天性上斜筋麻痺は健側への斜頸を特徴とし、そのまま成長すると顔面非対称や側湾症など骨格に影響が生じるため、斜視角が測定できれば早期に手術またはプリズム眼鏡での治療を行います。下斜筋過動を伴う15プリズム以下の上斜視に対しては下斜筋切除術を行い、20プリズム以上の大角度の上斜視を有する症例では、下斜筋切除術に加え必要に応じて上斜筋腱縫縮術などを行います。

後天性斜視

近年話題になっているのが、スマートフォンなどのデジタルデバイスの過剰使用と内斜視の関連です。日本弱視斜視学会および日本小児眼科学会が全国的な調査を行っており、JCHO中京病院 眼科もこの研究に参加しています。
ほかに後天性斜視の原因として、甲状腺眼症、重症筋無力症、麻痺性斜視、固定内斜視などがあげられます。
他科と連携をとりながら、迅速に診断することを心がけています。また、麻痺性斜視に対しての西田法、固定内斜視に対しての横山法など、日本人医師が開発した優れた術式も施行しています。

小児眼科

先天白内障、発達緑内障に対する手術治療および弱視治療を行っています。網膜硝子体専門医や緑内障専門医が精度の高い手術を行い、斜視弱視専門医が屈折管理および弱視治療を行います。

最新情報・
研究トピックス

TOPICS

学会活動

第79回日本弱視斜視学会総会のシンポジウムにおいて、横山吉美医師がシンポジストとして「斜視手術の予後・乳児内斜視」について発表しました。
現在は日本弱視斜視学会の監事を務め、横山吉美医師の指導医でもある矢ケ﨑悌司先生(眼科やがさき医院院長、JCHO中京病院眼科非常勤医)は、日本における乳児内斜視に対する超早期手術のパイオニア的な存在です。
1994年に、それまで両眼視機能の獲得は治療を行っても困難であると考えられていた「乳児内斜視」に対して、生後6ヶ月以内という超早期に施行された手術によって立体視の獲得につながったことが、米国から報告されました。
それにより、社会保険中京病院(現・JCHO中京病院)眼科でも、1995年から乳児内斜視に対してできるだけ早期の治療を行うことを推進してきました。また、手術を受けた患者が、のちに立体視機能検査を実施することができる年齢に達したことで検査を行い、その結果をもとに術後の立体視の発達について論文としてまとめてきました。
矢ケ﨑先生が学会長を務めた2012年の第68回日本弱視斜視学会においても、横山吉美医師が乳児内斜視についてシンポジウムで登壇する機会がありましたが、当時は乳児内斜視に対する手術治療の経験がありませんでした。
それからおよそ10年が経過し、横山吉美医師自身も乳児内斜視の患者の手術治療を行う機会が増え、実際に超早期手術を行い、術後の立体視を確認することができた症例も経験し、論文とともに具体的な症例を交えながら講演したことで、第79回総会のシンポジウムでは説得力の増した内容になったかと思います。
乳児内斜視の超早期手術については国内外ともに賛否が分かれますが、2022年に報告された乳児内斜視の手術時期に関するreview論文から読み取ることができるグローバルの見解でも、感覚面の予後においては超早期手術が有利であることが述べられています。
しかしながら、手術を行なって終わりというわけではありません。手術後も、厳密な屈折管理を含めた長期的な経過の観察が両眼視機能の獲得および維持にとって重要です。今後もよりよい両眼視機能獲得を目指した治療に努めていきたいと思います。

研究活動

穂積医師が取り組んできた研究の成果が、investigative ophthalmology & visual science誌に論文として掲載されました。
タイトル“Relationship Between Suppression Scotomas and Stereoacuity in Anisometropic Amblyopia With Successfully Treated Visual Acuity”
この論文では、不同視弱視患児のうち、顕性斜視がなく弱視治療後に両眼とも視力1.0以上を獲得した103例について、偏光4ドット検査器(P4D)を用いて抑制暗点の定量を行い、抑制暗点の大きさと立体視力および4Δbase out test(4ΔBOT)の判定との関連性について検討しました。その結果、抑制暗点が小さいほど立体視力は良好であり、4ΔBOTの結果と抑制暗点の大きさと立体視力には密接な関連があることがわかりました。
昨今の国内における弱視・斜視研究では、病態や手術効果などに関する報告が多い印象を受ける中、当論文のような両眼視機能の研究は大変に貴重であると考えます。
また、鑑別が困難とされてきた不同視弱視と微小斜視弱視が、そもそも病態としてオーバーラップしている可能性があることを示唆した、世界でも初めての報告になります。
当論文はPubMedサイト、IOVSサイトともにダウンロードすることができます。

お知らせ

INFORMATION

第79回学会総会の会期中に開かれました日本弱視斜視学会の理事会において、2026年に開催する日本弱視斜視学会総会の学会長を拝命いたしました。この場を借りて、ご報告申し上げます。
また、このような大役をお任せいただけましたのは、ひとえに市川一夫先生、矢ケ﨑悌司先生はじめ、ほか先生方のご指導の賜物であり、あらためて感謝するとともに御礼を申し上げます。今後とも引き続きのご指導とお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(JCHO中京病院 眼科 横山吉美)