先天および後天の色覚異常に関する検査と診療および臨床研究を行っています。検査ではスタンダードな仮性同色表(石原色覚検査表II、標準色覚検査表)や色相配列検査(Panel D-15)に加え、確定診断が可能なアノマロスコープ検査(一部の施設のみ)までを実施することができ、診療では色覚についての専門知識を持った医師による検査結果の説明、日常の生活や職業上の注意点などの解説や指導をしています。また、必要に応じて学校や職場への診断書作成も行います。
表1 先天色覚異常の分類
L錐体 | M錐体 | |
機能がない | 1型2色覚(旧:第1色盲) | 2型2色覚(旧:第2色盲) |
機能が通常と異なる | 1型3色覚(旧:第1色弱) | 2型3色覚(旧:第2色弱) |
視機能・色覚グループでは、視機能に関する研究と色覚の専門外来を担当しています。中でも、私たちはかねてから国立大学法人信州大学 工学部 電子情報システム工学科の田中清教授率いる研究室と共同で研究を行い、2024年は特にそれらの研究が大きく発展した1年となりました。
細隙灯顕微鏡を用いた徹照法による水晶体の画像と直接照明法による水晶体の画像を処理することによって、白内障眼における水晶体混濁のタイプや程度を自動的に分類する方法を考案しました。皮質白内障と後嚢下白内障は徹照法による画像から、核硬度は細隙灯顕微鏡でのスリット光による画像からそれぞれの分類を試み、特に核硬度の分類は白内障手術の手術難易度を推定することにとって重要な要素となるため、超音波乳化吸引装置によるCDE(Cumulative Dissipated Energy)値との関連性を確認することで分類の妥当性を検証し、分類結果とCDEから一定の相関が得られたことがわかりました(r=0.545)(第63回日本白内障学会・第50回水晶体研究会で発表し、優秀演題賞を受賞しました)。
幼少期の検診等で先天色覚異常に対する検査は必須ではないため、本人が無自覚であることも多く、例えば、就職活動を行う時期にはじめて困難をきたす場合があります。本邦では男性の人口のうち5%が色覚異常を有しているとされるデータがあり、決して低い割合ではありませんが、一方で色覚異常の知識が一般的に浸透しているわけではない現状があります。そのような中で、色覚異常の方々の生活の一助を担うことを目標にスマートデバイスを活用し、先天色覚異常の方の日常生活上のサポートを行う機能や、カメラを利用し色を分析する機能を搭載したアプリケーションの開発も進めています。
従来から、加齢によるデジタル映像の色の見え方の劣化を補正する方法を検討してきました。近年、眼科手術器機の発展により、顕微鏡を覗くことなくモニタに写し出された映像を見ながら手術を行うHUSが広まるとともに、映像の明るさ、色、コントラスト等を調整することが可能になるなど視認性を高めることができるようになりました。私たちが考案した色補正の技術は、眼科手術映像における瞳孔領内に限定した領域に適用することで、遅延も少なく抑え、リアルタイムでの色補正を実現し、さらなる視認性向上を図ることにつながりました(画像電子学会 2024年 第307回研究会 in 石川で発表、若手奨励賞を受賞しました)。
色覚外来を引き続き継続しつつ、実用的かつ社会的に貢献できる研究を行っていきたいと思います。