OPHTHALMOLOGY SPECIALIZED FIELDSOPHTHALMOLOGY SPECIALIZED FIELDS

OPHTHALMOLOGY SPECIALIZED
FIELDS
専門分野
視機能・色覚

先天および後天の色覚異常に関する検査と診療および臨床研究を行っています。検査ではスタンダードな仮性同色表(石原色覚検査表II、標準色覚検査表)や色相配列検査(Panel D-15)に加え、確定診断が可能なアノマロスコープ検査(一部の施設のみ)までを実施することができ、診療では色覚についての専門知識を持った医師による検査結果の説明、日常の生活や職業上の注意点などの解説や指導をしています。また、必要に応じて学校や職場への診断書作成も行います。

医師

DOCTORS

  • 市川 一夫
    市川 一夫
    中京眼科 視覚研究所
    所長
  • 中村 英樹
    中村 英樹
    名東眼科
    院長
  • 佐藤 裕之
    佐藤 裕之
    佐藤裕也眼科医院
    理事長
  • 横山 翔
    横山 翔
    JCHO中京病院 眼科
    医長
  • 林 信人
    林 信人
    中京眼科 医長
  • 市川 翔
    市川 翔
    中京眼科 医長

共同研究者

RESEARCHER

  • 田中 清
    田中 清
    国立大学法人信州大学
    工学部 教授
  • 田中 芳樹
    田中 芳樹
    中京眼科 視覚研究所

診療内容

CLINICAL SERVICES

色覚異常

先天色覚異常
先天色覚異常は、遺伝によって引き起こされます。視細胞であるL錐体、M錐体、S錐体のいずれか、または、それらの複数の機能が通常と異なることにより、色の見え方が変わってきます。しかしながら、先天色覚異常はL錐体またはM錐体に関するものが大半を占め、L錐体の異常を1型、M錐体の異常を2型と呼びます。さらに、程度として、1つの錐体の機能がない場合を2色覚、通常に比べ機能が弱い場合を3色覚と呼びます(表1)。また、先天色覚異常は、視力や視野といった色覚以外の視機能は正常です。

表1 先天色覚異常の分類

L錐体 M錐体
機能がない 1型2色覚(旧:第1色盲) 2型2色覚(旧:第2色盲)
機能が通常と異なる 1型3色覚(旧:第1色弱) 2型3色覚(旧:第2色弱)
学校での色覚検診
2002年に学校保健法が改正され、差別やいじめにつながる可能性があることを理由に小学校での色覚検査が必須ではなくなり、それ以来、色覚検査が行われることはほとんどなくなりました。しかし、先天色覚異常の場合、自身の色覚の状態を知る機会を失い、職業選択の時期や就職したのちに不利益を被る事例が増えました。
この経緯から、2014年に学校保健法が再度改正され、任意ではあるものの、学校における色覚検査が適正に行われることの周知がなされました。
後天色覚異常
色覚異常は水晶体や網膜、視神経や脳の異常、さらには加齢によっても現れることがあり、遺伝による色覚異常以外は全て後天性色覚異常に分類されます。白内障や緑内障をはじめとした様々な疾患で生じ、多くは視力や視野にも異常が認められます。後天性はS錐体の異常が多く先天色覚異常とは質が異なりますが、L錐体、M錐体の異常に似た色覚異常など様々なタイプがあり、症状の程度も疾患の進行や治癒状況により変わります。

検査

先天色覚異常
先天色覚異常の検査の種類は、大きく分けて仮性同色表、色相配列検査、アノマロスコープの3種類になります。
それぞれにいくつかの検査機器がありますが、国内での標準的検査機器としては、仮性同色表は石原色覚検査表II 国際版38表、標準色覚検査表 第1部(Standard Pseudoisochromatic Plates part 1: SPP1)、色相配列検査はPanel D-15、アノマロスコープはナイツ アノマロスコープ OT-IIがあります。
アノマロスコープは確定診断に用いられますが、検査技術が必要であり、被検者が年少者などの場合は診断が難しいときがあります。
また、細かい異常の程度分けが必要な場合にはランタンテストも実施することがあります(当グループでは中京眼科のみ)。
当グループでは中京眼科およびJCHO中京病院 眼科において色覚の専門知識を持った医師及び検査員による色覚外来を設け、アノマロスコープを使用して確定診断までを行うことが可能です。また、前述検査の結果に基づき、色覚に関して豊富な知識を持つ医師から適切なアドバイスをすることが可能です。
後天色覚異常
後天色覚異常に対する標準的な検査はありませんが、仮性同色表である標準色覚検査表 第2部及び第3部(Standard Pseudoisochromatic Plates part 2 and part 3: SPP2, SPP3)や、色相配列検査の100 hue test(中京眼科のみ)等で検査を行い、網膜疾患をはじめとした眼疾患による色覚異常も調べることができます。

トピックス

TOPIX

視機能・色覚グループでは、視機能に関する研究と色覚の専門外来を担当しています。中でも、私たちはかねてから国立大学法人信州大学 工学部 電子情報システム工学科の田中清教授率いる研究室と共同で研究を行い、2024年は特にそれらの研究が大きく発展した1年となりました。

白内障における水晶体混濁の分類

細隙灯顕微鏡を用いた徹照法による水晶体の画像と直接照明法による水晶体の画像を処理することによって、白内障眼における水晶体混濁のタイプや程度を自動的に分類する方法を考案しました。皮質白内障と後嚢下白内障は徹照法による画像から、核硬度は細隙灯顕微鏡でのスリット光による画像からそれぞれの分類を試み、特に核硬度の分類は白内障手術の手術難易度を推定することにとって重要な要素となるため、超音波乳化吸引装置によるCDE(Cumulative Dissipated Energy)値との関連性を確認することで分類の妥当性を検証し、分類結果とCDEから一定の相関が得られたことがわかりました(r=0.545)(第63回日本白内障学会・第50回水晶体研究会で発表し、優秀演題賞を受賞しました)。

スマートデバイスを利用した色覚アプリケーションの開発

幼少期の検診等で先天色覚異常に対する検査は必須ではないため、本人が無自覚であることも多く、例えば、就職活動を行う時期にはじめて困難をきたす場合があります。本邦では男性の人口のうち5%が色覚異常を有しているとされるデータがあり、決して低い割合ではありませんが、一方で色覚異常の知識が一般的に浸透しているわけではない現状があります。そのような中で、色覚異常の方々の生活の一助を担うことを目標にスマートデバイスを活用し、先天色覚異常の方の日常生活上のサポートを行う機能や、カメラを利用し色を分析する機能を搭載したアプリケーションの開発も進めています。

Heads Up Surgery(HUS)における眼科手術映像の色補正

従来から、加齢によるデジタル映像の色の見え方の劣化を補正する方法を検討してきました。近年、眼科手術器機の発展により、顕微鏡を覗くことなくモニタに写し出された映像を見ながら手術を行うHUSが広まるとともに、映像の明るさ、色、コントラスト等を調整することが可能になるなど視認性を高めることができるようになりました。私たちが考案した色補正の技術は、眼科手術映像における瞳孔領内に限定した領域に適用することで、遅延も少なく抑え、リアルタイムでの色補正を実現し、さらなる視認性向上を図ることにつながりました(画像電子学会 2024年 第307回研究会 in 石川で発表、若手奨励賞を受賞しました)。

今後の取り組み

FUTURE PLAN

色覚外来を引き続き継続しつつ、実用的かつ社会的に貢献できる研究を行っていきたいと思います。